未来教室・アンビシオン文京の責任者が語る「超短時間就労」の可能性(前編)

一般社団法人しごと・しあわせラボ(以下SSL)とNPO法人特別支援教育研究会(以下NPO)は、2021年から業務委託という形で、携帯電話の抗菌コーティング事業を進めてきました。この事業は一回の業務時間が超短時間の就労モデルを採用した試みです。今回は、NPO理事の秋山明美さんにお話を伺いました。前編と後編でお届けします。

秋山明美(あきやま・あけみ)NPO法人特別支援教育研究会理事、未来教室(児童発達支援)室長・児童発達支援管理責任者。東京都内の公立小学校校長としてインクルーシブ教育を推進した経験から、障害のある子どもたちが中学卒業後も地域で学び続けることができる場として2014年に未来教室を設立。生徒一人ひとりの学習レベルに合わせた教育、義務教育からの「学びの継続」を柱に活動している。

Q:秋山さんのご略歴と法人立ち上げの経緯、NPOが運営するアンビシオン文京/未来教室について教えてください。

秋山さん(以下、敬称略):私の教員生活最後に校長を務めていた学校は、今でいう イ“ンクルーシブ教育 を掲げる小学校でした。私は、”20年教員を務め、教頭、校長と経験しましたが、実は一度も特別支援学級の担任になったことがありませんでした。校長になってから特別支援学級が設置されている小学校で働き、最後の学校も設置校でした。しかし振り返ってみると、当時担任だった42人学級クラスに自閉症のお子さんが2人たことを覚えています。その時、彼らがいてくれることによって、クラス全体がすごく良い雰囲気でした。インクルーシブ教育とは関係なく、校長になった時、「そんなことがあったな」と思い出しました。そういう経緯から、最後の学校では、校内に「小さな共生社会」を作ろうと思ったんです。障害の有無にかかわらず、それぞれの個性として「みんな一緒」という考え方で、すべてのことを一緒に行ってきました。それは、私よりも、教職員がその思いを汲んでくれて、休み時間でも、特別支援学級・普通学級関係なく、すごく楽しそうに遊んでいました。 そんな彼らを見ているうちに、中学校の特別支援学級へ進み、卒業して義務教育が終わった後の「学びの場」はどこにあるのだろうと考えるようになりました。現状、中学卒業後の進路選択は就労か特別支援学校という二つのルートがほとんどです。敷かれたレールに 乗っかることは簡単 かもしれませんが、保護 者も、そこではたと考え込んでしまうんです。これが、子どもたちの幸せのためになるのだろうかと。障害があるからといって、高校に 入学した 途端 に就労に向けて 訓練 を受けることが果たして 本当にベストな選択なのだろうかと。そう考え、就労でもなく特別支援学校にも進まない子どもたちのもう一つの選択肢として、児童発達支援事業として「未来教室」を立ち上げました。その一年前に、NPO法人特別支援教育研究会を立ち上げています。 未来教室でやることは、学校とそう変わりません。生徒たちの「学び」を日常 の中にはめ込んでいくというか、学校でやってきたことの継続です。義務教育ではないので学習指導要領 に縛られずに、「これがだめならこっち、これができなくてもこれならできる」と、一人ひとりのニーズに応じてやってきました。利用期間は3年間です。今年で8年目になりますが、最初に入ってきた生徒たちが卒業を迎えた 頃に、「やはりどんな形であれ脳への刺激 は必要 なんだ」と痛感 しました。最初に入ってきた生徒は5人でしたが、目に見える成長として、1+1の足し算もできなかった子が、九九ができるようになるのです。「障害があるからやらせない、やってはいけない」とされてきたことが、音楽でも美術でも、英語だって、大人顔負 けにできるようになる子もいる。それが生徒たちの自信につながっていくのがわかりました。 未来教室を卒業した生徒たちのその後の受け皿として、行政と共 同でアンビシオン文京を立ち上げました。また、この4月から児童発達支援と放課 後等デイ サービスを一つにした多機 能型の未来教室として出発し、以前とはまた違った 意味 で生徒たちが良い刺激 を受けているなと感じます。

Q:文京 区には、特別支援学校がないという事情があります。地域内に学びの場がほしいという保護者の思いを汲んで、法人を設立されたのですね。

秋山:法人設立に関しては、私は一同志 として関わってきました。校長時代から、 区内に特別支援学校がないということは保護 者から 相談 を受けていました。未来教室の先代 の理事が「 単なる 預かり 所ではない場所、同時に、特別支援学校との違いも出さなくては」とおっし ゃっていましたので、近隣 の特別支援学校を見学させてもらいました。未来教室と特別支援学校では、「学び方」のアプローチが違うんだなと感じましたね。未来教室では、学校でやってきたことの継続で、個人差はありますが、少しずつレベルを上げていきながら、できることを増やしていくアプロー チを取っています。一方、見学した特別支援学校では3年後の就労に重きを置いており、学習に関しても、習熟度が バラバラの生徒に対して一 斉授 業という形式を取っているために、個別の学習ニーズに沿った内容になっていませんでした。それを見て、未来教室は相対比較ではなく、生徒一人ひとりの絶対比較で成長を支援していこうと考えたんです。

Q:未来教室・アンビシオン文京に通っている方に見られる、学びの傾向 のようなものはありますか。その上で、就労する際の課題があればお聞かせください。

秋山:現在、未来教室に通っている生徒は、幼稚園 から18歳まで 男子2人、 女子3人です。 皆さん 知的 障害と 診断 されていますが、「知的 障害」と一言で言っても 様々 なタイ プの人がいます。アンビシオン文京には、18歳から22歳までの 男性6名、女性4名が通っています。21歳の方は、仕事をしながらうちに通っています。6~7時間働いた後で、うちに来て勉強 したり マラソンしたりしています。マラソンなら自宅へ帰ってからでもできると思われるかもしれませんが、職場から自宅の間に ワンステ ップ あった方が良いみたいですね。他にも、 企業から業務委託を受けて働きに行っている人がいます。今はコロナで出 勤回数を減らさざるを得ない状況ですが、一時は月1万円くらい収入がありました。皆さん 総じて 言えるのは、環境 の変化 に敏感 なこと。いつも来ている教室でも、日によって 集まる メンバーが 違ったり、新顔 のボランティアさんがいたりすると、そこで対応が難しくなってしまう人もいます。それから、指を使った 細かな作業が難しい人もいます。「できるんだけれど、自信が持てない」という人も。また、集中力は20~30分が限界です。そのため、30分程度で一度休憩を挟むようにしています。指示 理解については、毎日顔 を合わせる職員の言うことは理解できても、知らない人が来るとぽかんとなってしまうことも。ルーティン作業の場合でも、指示 をする人との関係性が土台 になっているんですよね。そうはいっても、皆さん 予期 せぬ予定変更にはずいぶん慣れてきましたよ。

Q:知的障害者の就労上の課題はどんなことだと思われますか。

秋山:どの企業もそうですが、知的 障害でも軽度の人には求人がたくさんあります。でも、「その人に合った仕事」に就くのは難しいと 感じます。以前コンビニの清掃 をしたときは、「営 利を目的 としているので、個別の対応 をするのは難しい」と言われたこともあります。私自 身、もっと企業とのつながりを増やしていかないと思っても、そのきっかけがなかなかないですね。

※後編では、秋山さんが感じている日本 の障害者雇用の 課題 や、超短時間就労の可能性についてお話しています。

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