【事例紹介】多様な繋がりで職場幸福度を向上

【事例紹介】多様な繋がりで職場幸福度を向上

しごと・しあわせラボでは、働くことを通じて豊かな繋がりを生み出している様々な事例を紹介しています。

今回は、企業が障害者と業務シェアすることで双方の幸福度向上を目指す「活躍協創プロジェクト」の事例紹介です。

企業が社外の障害者と業務をシェア

企業が普段おこなっている業務を、全国の障害のある人たちとシェアすることで、お互いの幸福度高めていく「活躍協創プロジェクト」という取り組みが行われています。

今回は、そのプロジェクトに参加している株式会社エル・ティー・エス(以下、LTS)の取り組みをご紹介します。

このプロジェクトでは、LTS社内の各種文書の英訳作業を、一般企業の会社員であり重度身体障害者である茂森勇さんに翻訳してもらっています。

依頼の背景として、LTS社内での外国人社員の増加があります。
これまでは社内のコミュニケーションはすべて日本語で行っていましたが、外国人社員に向けて徐々に社内文書の英語化に取り組むようになりました。

こうした中、LTS社員である大井悠さんが活躍協創プロジェクトのことを知り、翻訳作業について活躍協創プロジェクト事務局に相談したところ、アメリカやイギリスでシステムエンジニアとして働いていた経歴を持つ茂森勇さんに依頼することになりました。茂森さんとしては、翻訳を仕事として受けるのは初めてで、平日に福祉機器を開発する企業でシステム開発などの仕事をしながら、副業としてLTS英訳プロジェクトに参加することになりました。

Microsoft Teamsというチャットやファイル共有ができるツールを使ってやり取りを行い、翻訳作業は主に週末を中心に実施しています。

コミュニケーションを重視

業務の依頼と実行が単なる「業務委託・外注作業」ではなく、豊かな関係性を構築して双方の幸福度向上につなげるために、業務に関すること以外にも気軽にコミュニケーションを図っています。そして月に一度はオンラインでミーティングを行い、交流を図っています。

オンラインでのミーティング
Microsoft Teamsを使用したチャットでのやりとり

2022年の冬には、LTS英訳プロジェクトに関わるメンバーで約半年間実施した成果検証をおこないました。
メンバーからは、
「業務の進捗が想像以上に早く驚いた」
「英訳文書は社内で閲覧され始めている」
といった、スムーズに実施されたことによる業務上の評価の声が得られただけでなく、

「業務を超えた交流を通じて、対等な関係性と信頼関係ができた」
「新たな人の繋がりが生まれているのが面白い」
「業務的にも思った以上のクオリティで助かっている」
「普段の生活においてもバリアフリーの視点が持てるようになった」
「自分の可能性を理解し信じてくれていて嬉しい」

といった声が上がっており、プロジェクトによる業務効率化(アウトソーシング効果)だけでなく、各個人の社会参画への意欲や人生観の前向きな変化がみられました。

企業担当者も幸福度が向上する効果

このプロジェクトでは、幸福度研究の第一人者である慶應義塾大学の前野隆司教授による共同研究対象となっており、プロジェクトに関わる人々の幸福度がどのように向上していくのかを検証していくことで、企業が業務を通じて社会の人々と多様なつながりが職場における幸福度向上につながることを実証実験しています。

現在、本プロジェクト参加者の幸福度調査においてはデータ収集段階ではありますが、幸福度向上に好影響を及ぼす傾向が見られ始めています。

新たなチャレンジをする障害者だけでなく、企業側の職場でも幸福度が向上することが立証できることで、より多くの企業がこうした取り組みを始めるきっかけになることが期待されます。

活動カテゴリの最新記事