現在の障害者雇用の世界は法定雇用率の達成が重要な課題としてとらえられ、そのため週30時間(最低20時間)働くことができる人が障害者の枠組みとしてとらえられがちです。働くにあたり長時間の労働が雇用条件として課され、その時間の枠組みにはまらない人には福祉的就労への道に進むことが余儀なくされているのが現状です。
子育ての合間にパートで働く、介護と両立させたいので業務委託で働く、派遣社員で職務を選びながら働く。働く選択肢は世の中に多様にあり、障害のある人でもない人でもその人がもつ特性を生かし、その人の状況に応じて時間にとらわれず働ける環境を作ることは、就労の機会を創出できるとともに、仕事のやりがいや生きがいにもつながっていきます。この働き方の多様性を障害のある人にも提供したい、そう思い私たちはしごと・しあわせラボの活動に取り組んでいます。
また障害者雇用の制度としての課題と並行して、就職までの道のり、賃金、そしてジョブ型雇用についても課題があります。厚生労働省の障害者の就労支援対策(令和元年)によると、就労継続支援A型作業所の平均賃金は78975円。就労継続支援B型作業所の平均賃金は16369円。時間給に換算するとA型作業所が887円そしてB型作業所が223円です。平成30年度障害者雇用実態調査結果によると30時間以上身体障害者の平均賃金が248000円知的障害者が137000円精神障害者が189000円となっています。


この賃金格差を見ると、多くの障害のある人が一般就労を目指すのも当然です。また障害者雇用率をみたしたい企業側も法定雇用率を満たす働き方ができる障害者を探すため、特別別支援学校の高等部では就職率が重視され、日々就労のための訓練が行われています。
高校時代のことを皆さん振り返ってみてください。私自身クラブ活動にいそしんだり、友達と遊んだり、恋愛もしました。アルバイトもして、何が自分に向く仕事かを見分けたり、給料をもらうことがどういうことか体感する時間もありました。社会人となって働く前にもっと多くの悩み考える時間があるとても人生にとって大切な時間をこの時期すごしていたと思います。障害があるからこの自由に考え、楽しむ時間が短くなっていることに私が疑問があります。また高校を卒業してすぐの就職が、障害者の離職率を高める原因の一つであると考えます。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害別に見た職場定着率の推移をみると。1年後精神障害のある方の継続率は49.3%。つまり51.7%の人が1年内に離職をしています。

また障害のある人の離職理由としては
- 職場の雰囲気・人間関係(身体・精神)賃金・労働条件が合わない(身体・精神)仕事内容が合わない(身体・精神)疲れやすく体力意欲が続かなかった(精神のみ)症状が悪化(再発)した(精神のみ)作業、能率面で適応できなかった(精神のみ)
などがあげられ、環境のアンマッチング、30時間働くということの前提による体力・精神への影響とそこからくる症状悪化などがみられます。その人の特性応じた働き方、労働時間を得ることでこの離職率は軽減できるのではないかと考えます。
こうした課題に取り組むべく考えられたのが超短時間雇用モデルです。
週当たり15分から1時間といったごく短い時間からの雇用を実現することからこのように呼ばれており、東京大学最先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授がとりくまれています。
例えば商品情報の英訳、胃カメラの洗浄、銭湯でいすやおけを清掃、コンビニで飲み物の品出しなどその仕事だけをジョブ単位で依頼をします。こうすることで人員不足で困っている地域の企業や商店などと連携して障害のある人は働く機会を、地域の企業は人員不足を解消することができます。1日10分程度、机の下やベッドの下などを掃除するすみっこがかりさんは、会社の中の落とし物をみつけたり、パン屋さんでコロネやクロワッサンをまるめるくるくるさんは企業や商店の人から感謝され、楽しく働けているそうです。
こうした環境をわたしたちしごと・しあわせラボは作っていきたいと思っています。現在神奈川県川崎市や東京都渋谷区、ソフトバンク株式会社ではショートタイムワーク制度としてこうした取り組みを実施しています。継続するためには自治体や作業所等の連携が必要になってきますが、まずは短時間でも働く機会と、地域での事例を増やすことを目標に1つ1つ今つみあげております。
今までにはインタビューの文字起こしや、携帯電話のコーティング作業、セミナー前の会議室の消毒など取り組んでいます。
うちの子供が高校生になった時、近所の喫茶店や本屋さんでバイトが普通にできる社会、障害があるからといって高校や大学時代にあたる20台前後の時代を働くことや訓練に費やさなくても楽しく暮らせる時間を持つ自由を作り上げていきたいと思います。
是非皆さんも自分でやるにはめんどくさいなと思う仕事、ここだけやってもらえたら助かるなという業務があればお声がけくださいませ。